『ヤンデレ惨』第2.5話「覚醒のユーミア」ver1.1 -Chapter.1-
2010/06/21(月) – ミニストーリーver.1.1
この週末は、「慶次」を打っても「操」を打っても「海」を打っても全く当たりを引けなかった……、運気がドン底のオオシマPです。
もうパチンコをスロットもやめる!(200回くらいコレ言った)
さて、今日から4回にわたって、ネタバレ予想キャンペーンの全員プレゼントであるミニストーリー『ヤンデレ惨』第2.5話のちょっとだけ書き直しバージョンである、「覚醒のユーミア」ver1.1をお送りします。
以下、諸注意。
※以下のストーリーは、CD『ヤンデレ惨』第2話「ユーミア編」で語られなかった、ユーミアと巴の戦闘がメインのお話しです。出来ればCDを聴いてからお読みください。
※CDに入れてないストーリーなだけに、「ヤンデレ」というテーマから完全に逸脱して、趣味に走った要素が強いストーリーになってます。「ヤンデレ」描写にはあまり期待しないでください。
※全プレで配布したストーリーとは大きな変更はありません。ちょっとした加筆修正のみです。
『ヤンデレ惨』第2話において、ユーミアと巴がどんな風に戦ったのか、はじまりはじまり~。
『ヤンデレ惨』第2.5話「覚醒のユーミア」ver1.1
-Chapter.1-
~フェアリーランド入り口前の広場にて
「えー、先輩風邪引いちゃったの?」
「ああ、そうなんだ巴。悪かったな、約束すっぽかすことになっちまって」
「ううん、そんなことないよ。先輩の体のほうが心配だもん! 大丈夫なの先輩?」
朝倉 巴は気落ちした心情を悟られないよう、携帯電話に向かって努めて明るく話しかけた。
今日は巴の退院を祝って、愛しの先輩と二人で「フェアリーランド」でデートしようと約束した日だったのだ。
ところが待ち合わせ時間の少し前に、巴は先輩から「風邪を引いてしまいそっちに行けそうもない」という電話を受けた。
「それでさ巴、悪いんだけど……。出来ればウチまで看病に来てくれないかな。
もし良ければでいいんだけど」
「え! お家に行っていいの先輩! うん、もちろん行っちゃうよ!
先輩の風邪が治るように、一生懸命看病してあげるね!」
「悪いな、折角のデートだったのに……、住所はメールで送っとくよ」
「うん、わかった♪ あれ、でも先輩?
お家にはメイドロイドさんがいるんじゃなかったっけ……?」
「ああ……、ちょっとメンテナンスに行ってて今日はいないんだ。
それに……、やっぱ巴の顔が見たいし……な」
「ああ、じゃああとでな」
電話を終えると、巴は期待に胸を膨らませてメールを待った。
(電話もらったときは今日は会えないと思ってたのに……、
先輩に会えるなら「フェアリーランド」でも先輩のお家でもどっちでもいいや♪)
本当は住所などとうの昔に調査済みでメールを待つ必要など皆無だったが、
巴は律儀にメールを待つことにした。
(余計なことを先輩に知られて、面倒になるのは避けなきゃ……、ね)
嬉しさに浮かれてボロを出さないよう自分を戒めた直後、
巴の携帯はメールを受信した――。
――――――――――――――――――――――――――――――
~都内、某アパート 1
「ああ、じゃああとでな」
そう言ってユーミアは、主の持ち物である携帯電話を置いた。
声紋を極限までオリジナルに近く再現可能な変声機能は、A9型たるユーミアにとっては些細な機能のひとつだ。
10分ほど前――。
携帯電話のメール履歴からマスターの待ち合わせ相手が「朝倉 巴」という少女だと知ったユーミアは、主のバイト先のコンピューターに侵入し、その容姿を記録した。
「ずいぶん小柄というか……、年齢の割に発育が足りなそうな方ね。
マスターにペドフィリアの傾向はないと思ってたんだけど……。
万一そうだとしたら、ボディの換装も考えておいたほうがいいかしら?」
主の性的嗜好にいささかの疑問を覚えたユーミアだったが、同時にバイト先に記録されていた巴の容姿に、何かしら引っかかるモノを関知した。
(何だろう……、何かがおかしいような……。いえ、不自然なのかな?)
訝しみつつも次にユーミアは、数あるユーミアの支援機のひとつである小型攻撃衛星“アマテラス”とリンクした。
衛星軌道上から「フェアリーランド」を捉え、巴と思しき少女の姿を確認する。
が、ユーミアの対人識別システムが生身の巴の姿を捉えた瞬間、彼女は生体スキャンの誤作動を疑った。
なぜならユーミアの対人識別システムは、朝倉 巴が女性ではないと告げているのだ。
(“アマテラス”とのリンク精度に問題が……?
いや、現在ユーミアと“アマテラス”のシンクロ率は98.6%、リンクにも識別システムにも問題は認められない。さっきの違和感に間違いはなかった……。
でもそんなバカな……、朝倉 巴は男性……なの?)
自らのシステムに絶対の自信を持つユーミアだったが、今は“A9”として覚醒した直後だ。なんらかのシステムエラーの可能性もゼロではない。
ユーミアは自らのゴーストを電脳フィールドに走らせた。
これからマスターと二人だけの世界を築いていくのだ、可能な限り危険は避けたい……。
それでなくともユーミアは、マスターが寝ている間に片付けなければならない、ちょっとした問題を抱えているのだ。
だが、ユーミアのゴーストが都内の教育施設関連のデータ検索を数秒で終了した結果は、ユーミアのシステムにエラーが発生したわけではないことを証明した。
都内の某学園に通学する、朝倉 巴という名の少年――。
先ほど“アマテラス”が捉えた少女の画像と、たった今発見した巴という名の少年の画像を照合した結果、99.9999%の確率で同一人物であるという結論に達したのだ。
ユーミアは口元に薄い笑みを浮かべて呟いた。
マスターと真に結ばれる前に、ユーミアが片付けなければならない問題。
それは先ほどユーミアが“A9”としての機能を回復した直後に発見した、驚愕の事実だった。
マスターとユーミアが今まで二人で過ごしてきたアパートには、至る所に隠しカメラと盗聴器が仕掛けられていたのだ。
覚醒前のユーミアは、本来持っている機能のほぼ全てが休眠状態にあったために認識できなかったが、機能を回復した彼女はそれら全てを瞬時に確認し、即座に隠しカメラと盗聴器にリンクして誤情報を送信させた。
何者かは知らないが、マスターに危害を及ぼす恐れのあるこの相手だけは速やかに抹殺しなくては……。
そう判断したユーミアは、まずその前に小さな障害から対処しようと思い、今日のマスターの待ち合わせ相手を調べたのだ。
そのデート相手が、まさかマスターに性別を偽っていようとは……。
「状況構築終了、システム“モイラ”による審議を開始します……、
“Lakhesis”“Klotho”“Atropos”、三機の審議が一致しました。
……この部屋の仕掛けは朝倉 巴の仕業に間違いない……。ならば……」
そしてユーミアは獲物を呼び寄せるため、主の携帯電話に手を伸ばした――。
――Chapter.2に続く――