『ヤンデレ惨』外伝 ユーミア編アフターストーリー4 « ヤンデレ惨 制作ブログ

『ヤンデレ惨』外伝 ユーミア編アフターストーリー4
2010/07/15(木) – アフターストーリー

どうも、もう梅雨は明けたんですかね? 雨はあまり好きじゃないオオシマPです。
『けいおん!!』てOPとED変えたんですね、今さら気がついた。
新しいCDが8月ということで、またオリコンを席巻するのが楽しみですね。

さて、本日はユーミア編アフターストーリーChapter.1-02をお届けします。
Chapter.1はこれで終わりです。
感想をいただいてるので、こちらは明日紹介しましょう。

あ、ご意見ご感想は以下まで。
お便りの送り先:yandere3_netabare@edge-records.jp
件名:『ヤンデレ惨』コメント
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今日はもういきなり本編どうぞー。

マスターと結ばれたユーミアは、綾小路重工「人工知能研究所」を訪れる。
彼女の目的はふたつ。
しかしユーミアはそこで、信じられない状況を見る――

『ヤンデレ惨』外伝
ユーミア編アフターストーリー「復讐の人形遣い」

~Chapter.1-02~

ユーミアの目的はふたつ。
ひとつは今後の自分と主の安全を確固たるものにするため、自分の同型機、もしくは後継機の開発に致命的なダメージを与えるためだ。
綾小路家が、長年の研究開発による偉大な結晶とも言えるユーミアを放置せざるを得ないのは、ユーミアに対して打つ手が戦力的に絶無だからである。
旧式の“A7”と“A8”では、何機繰り出そうとも“A9”にかすり傷一つ付けることは出来ない。それどころか、逆にコントロールを奪われてユーミアの手駒を増やす結果になるだけだろう。
そして“A9”は、ユーミア一機のロールアウトにしか成功していない。

もっとも、このまま綾小路を捨ておいたとしても、今後彼らが“A9”の増産に成功する望みが薄いことはユーミアにもわかっていた。
なぜならば、“TYPE-SAKUYA A9型”は綾小路以外の機関による協力があればこそ完成したのであり、そもそも綾小路単体で「大規模戦略決戦兵器」とも言えるユーミアを完成させることなど到底出来なかったのだ。

“A9”完成の絶対条件とも言える“クェーサーエンジン”の中枢部分は、スイスの「セルン研究所」が極秘裏に開発したものだ。綾小路重工には二基のみという条件で引き渡された。
当時、平和利用のためという名目で無理やりセルンを説得し、ほとんど強奪に近いカタチで奪い取ったシステムだったが、今では兵器開発が本来の目的であったことをセルンに探知されてしまっている。
セルンは偏屈な科学者の巣窟なだけに、研究所自体の性格も相当ひねくれている。
自分たちを騙した綾小路重工にエンジンの基部を再度引き渡すことなど、金輪際無いだろう。
そしてその事実は、綾小路が“クェーサーエンジン”を増産することが不可能であることを意味する。

エンジンに関してはこれでアウト。

エンジンの問題もさることながら、綾小路重工は機体の制御システムも用意できないのだ。
ユーミアの人工知能の制御に使用されている“システム・ワルプルギス”を開発し綾小路に提供したのは、アメリカの「ミスカトニック大学」神秘物理学部第三研究室だった。
当時、ユーミアの人工知能、そして機体とエンジンの統合制御に四苦八苦していた綾小路の科学者たちは、“システム・ワルプルギス”を搭載することで“A9”の完全な機体制御に成功し、驚喜したものだ。
だがこのシステムは完全なブラックボックスとなっており、綾小路の研究者たちでは内部の解析が不可能な構造になっていた。解析どころか、“システム・ワルプルギス”には科学以外の超常の技術が使用されていると、怪しげな噂まで囁かれる始末だ。
そして現在、問題のミスカトニック大学と、日本を裏から支配する座にある“三神”のひとつ“天聖院”は、永きに渡る因縁からついに開戦寸前、一触即発の緊張状態にある。
どのような理由があろうとミスカトニックとの現時点での接触は“天聖院”への造反と捉えられるに違いなく、綾小路にそんな神をも恐れぬ行為が出来るわけがない。

制御システムに関してもこれでアウト。

あとは綾小路重工が独自に新型エンジン、新型システムを開発するしかないが、それを待っていては第二のユーミアが産まれるまでに、ゆうに三百年はかかるだろう。

だがユーミアは念には念を入れて、戦闘用アンドロイド“TYPE-SAKUYA”シリーズに関する全てを破壊してしまうことにした。
研究開発の基盤を失ってしまえば、綾小路は戦闘用アンドロイドに関して一から出直すしか無くなるし、それだけの体力は綾小路には残っていないはずだ。

それが目的のひとつ。

ふたつ目の目的は、“TYPE-SAKUYA A1型”を発見し、破壊することだった。

“TYPE-SAKUYA”シリーズ最初の試作1号機であり、ユーミアたち全ての姉妹の母体ともなった、原初の機体……。
起動実験における人工知能の暴走事故により、幾層にも巡って厳重に封印され、研究所の最下層フロアに封印してある機体だ。

ユーミアが“A1”について所持している情報は、ほぼそれだけであった。
信じがたいことに、その機体性能、戦闘能力、暴走事故の原因など、“A1”に関する一切の情報が廃棄され、どこにも残っていないのだ。
そして“A1”の開発に関わった全ての科学者は暴走事故の後、短期間の間に原因不明の死を遂げていた。

ユーミアは“A1”の戦闘能力に関しては、特に危険視していなかった。
そもそも“A1”自体は戦闘用アンドロイドとして開発されたわけではない。孫娘を殺された当時の綾小路本家の総帥が、孫の写し身を創造しようとして産まれたのが“A1”なのだ。
その研究成果が兵器開発に転用されたのは事実だが、実際に戦闘用アンドロイドとして開発されたのは“A7”からのはずだ。
しかし“TYPE-SAKUYA A1型”という未知の存在に対する警戒心は、ユーミアの人工知能を明らかに圧迫していた。

(“A1”には間違いなく何らかの秘密が隠されているんだわ、そうでなければ“システム・ワルプルギス”がここまで執拗な警戒アラートを発したりはしない……。
ユーミアとマスターの未来のためにも、可哀相だけど“大姉様”には消えてもらはなくては……)

それが人工知能研究所を訪れたふたつ目の理由だった。

ひとつ目の目的は比較的簡単に達成された。
短時間で目的を達するため、ユーミアは七号まである拘束制御封印を五号まで解放、戦闘モード“レベルA”による大量破壊を実行した。
研究所の警備員と警備ロボット、そして所内にいた全ての科学者を抹殺し、戦闘用アンドロイド開発に関するありとあらゆるデータおよび機材を完全に破壊、“A7”と“A8”の姉たちは“SAKUYAネットワーク”に介入してコントロールを掌握し、眠りについてもらった。
ここまでの作業わずかに18分45秒、“A9”の恐るべき性能である。

しかし、ふたつ目の目的に関しては達成されることがなかった。
“A1”に関する情報収集のため適当に目に付いた老科学者の脳髄から吸い出したデータによって知ったことだが、“TYPE-SAKUYA A1型”はユーミアが襲来するたった22時間前に、何の前触れもなく突如として再起動、何重に施された封印を一瞬で解除して、そのまま姿を消してしまったというのだ。

(22時間前……、ユーミアが機能を取り戻したのとほぼ同じタイミングですって……!? これは偶然なの……?)

半信半疑のユーミアは、探査針を脳髄に撃ち込まれ、白目を剥いて引きつった笑みを浮かべる科学者を片手で引きずりながら、研究所最下層フロアに降り立った。

彼女は、いまや空となった拘束ケージを確認する。

「再起動の原因は不明……か……。この状況を演算予測によって導き出した……? まさか、そんなことあり得ない。
いえ、それ以前に一体どうやって拘束ケージの封印を解いたの? 見たところ力任せにケージを破壊したわけではない。そもそも戦闘用アンドロイドではない大姉様に、ケージを破壊するほどの莫大な出力はないはずだわ……、ユーミアの“クェーサーエンジン”をフルドライブしてようやく破壊できるケージのはずだもの」

ユーミアはモニタールームに移り、“A1”逃走時のケージの状況を呼び出した。

「正規の解放プログラムによってケージが解き放たれている……。そして、第三者がこの最下層フロアに侵入して封印を解除した形跡はない。
間違いなく大姉様が自分の意思で封印を解いたんだわ。でも、その方法は?
拘束ケージはその性質上、対象との機械的な接触は一切ないし、あらゆる電波介入だって完全に遮断してしまうのに……」

脳髄から探査針を無造作に抜き取り、打ち上げられた魚の如き痙攣を繰り返す哀れな科学者の頭部をレッグアーマーで踏み潰してから、ユーミアは次の行動について思案した。

「手がかりが何もない以上、姿を消した大姉様を見つけ出すのはさすがに困難か……。
この付近でぐずぐずしてこれ以上の痕跡を残すのは得策ではないわ。
綾小路の兵器開発を潰しただけで満足、としておきましょう」

“A1”を放置することに対しては未練が残ったが、ユーミアの同型機、そして後継機開発の可能性が潰れた以上、綾小路からのユーミアに対する危険は排除されたと考えて良かった。
この状況で最後に綾小路が取り得る手段は、“七罪”に泣きついてユーミアの破壊を依頼することだけだが、彼女はその可能性は限りなく低いと踏んでいた。
もし綾小路がそのような手段に出れば、その情報は“三神”に流れる危険性が高い。
大量破壊兵器を野放しにする失態を犯した挙げ句、その尻ぬぐいも満足に出来ない役立たずと認識されてしまえば、“三神”からどのような処罰を受けないとも限らない。
最悪、綾小路という家名は、あっさりと地上から消滅することになるだろう。
“三神”にとってそれは、ゆで卵の殻を剥くのと同程度に簡単なことだ。

「本当に馬鹿な連中だわ……、そもそもユーミアたちを開発した真の目的が戦闘用アンドロイドによる“七罪”の襲名なんて言うのだから、お話にならない……。
いくらユーミアでも、あんな狂人の集団と同等に序列されるなんて、御免蒙ります」

そう言ってユーミアは、廃墟と化した人工知能研究所を後にした。

そして彼女は、誰の邪魔も入らない、マスターと二人だけの閉ざされた楽園を創り出す。
余程のことが無い限り誰も訪れないであろう山間の奥深く、そこに新たな居を構えたユーミアは、水も漏らさない独自の哨戒システムによる結界を森全体に巡らせた。

(マスター……、マスターとユーミアを邪魔する者が現れることは、最早ありません……。二人だけの世界で、永遠に近い時間をマスターの為に捧げます……)

ユーミアは今後の状況について予測を立てた。

――少なく見積もっても150年ほどは、誰にも邪魔されることなくここでマスターと過ごせるでしょう。人間とは年月が経てば、過去のことなど忘れてしまう動物。それだけの時間が過ぎ去れば、とりあえずは安心だわ。その後は、状況に応じて対処していけばいい……。

しかしその予測は、あっけないほどあっさりと打ち破られる。
たった一人の人間の少女を前に、ユーミアが己の危機管理の甘さを紅蓮の怒りと共に噛み締めることになるのは、150年どころか、研究所の破壊からわずかに数週間後のことであった。

――Chapter.1 end ~ To Be Continued.――

次回掲載は……、改めて告知します! たぶん来週には一回載せられる……と思います。

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